保険のピル・リング
過多月経・月経困難症の
治療薬としての
保険の低用量ピル、
ミレーナについて
月経困難症とは、月経時に身体的、精神的症状が強く、日常生活に支障を来す状態を言います。
身体的症状:下腹部痛、頭痛、腰痛、嘔気、脱力感など
精神的症状:イライラ、気持ちの落ち込みなど
保険の低用量ピルはLEPと呼ばれ、卵胞ホルモンと黄体ホルモンの合剤です。
月経困難症や過多月経に対して一番効果が高いだけでなく、その他にもいろいろな効果(副効用)があります。
欧米では約30%の女性が低用量ピルを服用して、仕事や日常生活を快適に過ごしているのに対して、日本では約3%と非常に低く、未だにピルに対し偏見や抵抗感を持つ方が多いのは残念です。
生理痛(月経痛)を鎮痛剤で我慢しているうちに子宮内膜症が進行し、それが原因で不妊症になることがあります。子宮内膜症は10代から始まっていると言われており、高校生でも月経痛があれば、将来の不妊症予防のためにピルをお勧めします。
ピルの効果
- 月経周期が安定、月経期間が短縮、月経量が減ります
- 月経痛が軽くなります
- 月経前症候群(PMS)が軽減します
- 子宮内膜症の症状改善、予防になります
- きちんと服用すれば、99.8%の避妊効果があります
- ニキビ・多毛症に効果があります
- 卵巣がん、子宮体がん、大腸がんの発症率が下がります
気になる副作用について
- 飲み始めには、軽い吐き気や不正出血が起こることがありますが、大抵は2~3周期でおさまります。
- 血栓症:ピルを服用していない人に比べてリスクは約2倍程度です。
血栓症のリスクは、妊娠すると約6倍、出産後は約20倍と高く、正しく管理をすればピルのリスクは低いです。
喫煙者は血栓症のリスクが高くなるため、35歳以上、1日15本以上の喫煙者に処方はできません。 - 食欲が増えることはありますが、ピル自身で太ることはありません
- 将来妊娠しにくくなることは全くありません。むしろ、内服することで子宮内膜症の予防になるので、将来の妊娠に備えて内服することもメリットがあります。
月経困難症の治療薬(保険)
としてのピル
- ヤーズ、ドロエチ(ジェネリック)
- 24日の実薬と4日間の偽薬(プラセボ)が1シート
ドロスピレノンという黄体ホルモンの働きでむくみが軽減されます。
男性ホルモン抑制作用があるため、にきび・多毛症に効果があります。
月経前症候群(イライラ)に効果があります。 - ヤーズフレックス
- ヤーズの連続服用ができるピルで、最長120日間連続服用が可能です。途中で不正出血が続けば休薬して消退出血を出す必要がありますが、月経回数は減るため、月経困難症が強い方にお勧めです。また慣れてくると、仕事、旅行、試験等の都合に合わせて月経の調整ができます。
- フリウェルLD(ジェネリック)
- 21日間内服して、7日間休薬するタイプです。
内膜が薄くなる効果が高いので、月経痛が減り、月経量が少なく、月経が来ない事もあります。 - フリウェルULD(ジェネリック)
- フリウェルLDよりエストロゲン量が少なく、吐き気や血栓症のリスクが低いです。一方、不正出血がしばらく続くことがあります。
- ジェミーナ
- 周期投与(21日服用)と連続投与(77日)があります。
月経困難症が強い方は連続投与(77日)がお勧めです。黄体ホルモンのアンドロゲン作用で月経前症候群(気持ちの落ち込み)や性欲減退に効果がありますが、にきび・肌荒れには効果はありません。
来院時に詳しく症状を確認して、一番合うピルを選びます。
月経困難症に対する
子宮内避妊具について
- ミレーナ(IUS)
- 子宮内にいれる器具で黄体ホルモンが付加されていて、月経困難症・過多月経が改善し、避妊効果も非常に高いです。内服のピルと違い血栓症に対するリスクが無いため、血栓症のリスクが高くなる40歳以上や喫煙、肥満の方でも安全に使用できます。効果は5年間で入れ替えが必要ですが、毎日内服が必要な経口のピルよりも費用対効果が高いです。妊娠希望であれば、ミレーナを抜去することで元の状態に戻ります。
- 作用
- 器具に付加されている黄体ホルモン(レボノルゲストレル)が持続的に放出することで、子宮内膜を薄くし、月経痛や月経量を減らします。また、受精卵の着床を妨げ、頸管粘液を変化させることで子宮内へ精子の侵入を防ぎ、高い避妊効果があります。
- ミレーナの副作用
- ミレーナ挿入後の軽い下腹部痛や違和感は数日で治まります。
ミレーナを挿入した方の多くは、しばらく月経期以外の不正出血が続きますが徐々に減ってきます。月経量は減り、月経痛も徐々に減ってきます。
しばらくは不正出血への我慢が必要ですが、3−6ヶ月以内には不正出血は無くなり、月経量、月経痛もかなり減り、快適になります。 - ミレーナが適した人
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- 血栓のリスクが高い、副作用でピルが服用できない
- ピルは飲み忘れる心配がある
- 経膣分娩の既往がある(帝王切開既往のみの方はやや挿入が難しいです)
- 挿入時期
- 月経開始から7日以内に挿入します。
挿入時、挿入後の痛みは軽度で、鎮痛剤は不要ですが、ご希望の方には局所麻酔や痛み止めを使用します。
産後は4週間以降であれば挿入は可能ですが、授乳の有無でリスクが変わるため、受診時に相談します。
まれに脱出したり、位置がずれたりして効果がでないことがあります。挿入後は1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月毎で位置の確認をします。